新型コロナウイルス感染症が広がる状況下において、新たな診療スタイルとして、オンライン診療への注目が集まることとなりました。オンライン診療との親和性の高さから、利便性をいっそう向上させるのではと期待されるのが電子処方箋です。具体的にはどのように運用される予定なのか、どのようなメリットを実現できるのか、詳しく確認してみましょう。
オンライン診療が実現する新たな診療スタイル
新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療機関に直接来院することなく診療を受けたいと考える患者さんが増えることになりました。こうしたニーズに対応するため、新たな診療スタイルとして注目されるようになったのが、オンライン診療です。特にコロナの感染拡大下においては、発熱外来での活用が拡大しました。このほか、慢性疾患を持つ患者さんの定期受診や、在宅医療の現場でも通常診療の補填として、いっそう利用が増えると見込まれています。
オンライン診療における薬剤の受け渡し方法の現状も確認しておきましょう。
院内処方の場合には、医療機関が患者さん宅に薬剤を郵送します。
一方、院外処方の場合には、病院から患者さん宅に処方箋を郵送します。患者さんは受領した処方箋を薬局に提出し、薬剤を受け取ることになります。また、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2年4月10日事務連絡)」(0410対応)下で、電話やオンラインでの服薬指導を希望する場合は、病院から処方箋をファクシミリ等で送信しますが、その際備考欄に「0410対応」と記載します。後日、処方箋原本を薬局に郵送することも必要です。
電子処方箋で変わる、オンライン診療
このように、従来のフローでは処方箋が紙で受け渡しされるため、薬剤を受け取るまでの手続きが煩雑になっていました。処方箋の電子化により、これを簡素化できるのでは、という期待が高まっています。
患者さんの利用する医療機関と薬局がいずれも電子処方箋を導入している場合、薬剤がどのように提供されることになるか、その流れを確認してみましょう。
電子処方箋運用においては、医療機関が電子処方箋ファイルを登録する際、引換番号と呼ばれる電子処方箋のIDが発行されます。
オンライン診療後、医療機関はこの引換番号を電話やアプリを介して患者さんに伝達します。今度は患者さんから薬局に、電話やスマートフォンアプリ等で引換番号と保険情報を伝えることで、薬局で処方箋を確認できるようになります。
薬局は処方箋内容をもとに電話あるいはビデオチャット等で服薬指導を行い、患者さんの自宅に薬剤を配送します。
原本の郵送等が必要だった従来のフローに比べ、利便性が向上することが期待されています。
利便性の追求だけでなく、医療の質向上にも
電子処方箋のメリットは、処方箋の受け渡しにおける利便性の向上だけではありません。電子処方箋やオンライン資格確認の導入により、患者さんの同意をもとに、特定健診の情報や、薬剤情報等を医療機関や薬局のスタッフがリアルタイムで確認できるようになります。患者さんが複数の医療機関・薬局を利用している場合でも薬剤に関する情報を共有できるため、重複投薬を防止する上でも非常に有効です。
これらの処方・調剤情報を踏まえて診察や処方を行うことで、患者さんに提供する医療の品質が大きく改善されると期待されています。
今回は、オンライン診療における電子処方箋活用のメリットをご紹介しました。電子処方箋により利便性や医療の質が向上することで、この新しい診療スタイルがいっそう拡大していく可能性もあります。医療機関や薬局においては、こうしたメリットも考慮に入れ、電子処方箋の導入検討を進めてみてはいかがでしょうか。