Teladoc×ウィーメックス座談会「遠隔医療の発展と将来性」を語る

チーム医療をサポートする、リモート操作可能なリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」。パソコンやスマートフォンを介して、専門医の少ない医療機関と遠隔地の専門医をつなぎます。「あらゆる現場で、いつでも簡単につながる安心を」をコンセプトとし、救急対応から慢性疾患のケアまで、「Teladoc HEALTH」だからこそ実現できるチーム医療のかたちを提供する最先端のシステムです。

Teladoc×ウィーメックス座談会

この度、ウィーメックス株式会社の代表取締役社長・大塚と、同社のデジタルヘルス事業部遠隔ソリューション部長・小暮が、世界のバーチャルヘルス・遠隔医療分野をリードする米国企業、Teladoc Health, Inc.に所属する国際事業本部長・グイォニッシュさん、営業&国際事業開発統括部長・パーシーさんと座談会を実施。今回はその内容をレポートします。

座談会参加者

所属:Teladoc Health, Inc.

Thomas Geuenich(トーマス・グイォニッシュ)

GM Hospitals & Health Systems International Markets, GM Germany
病院&ヘルスケアシステム国際事業本部長、ドイツ統括部長

Ed Percy(エド・パーシー)

Vice President, Hospitals & Health Systems – Sales & Business Development International Markets
病院&ヘルスケアシステム事業部 営業&国際事業開発統括部長

所属:ウィーメックス株式会社

大塚 孝之(おおつか・たかゆき)

代表取締役社長

小暮 武男(こぐれ・たけお)

デジタルヘルス事業部 遠隔ソリューション部長

普及までの道のり

──海外において、遠隔医療が広く普及するまでの壁や課題をどの様に乗り越えたのでしょうか?

グイォニッシュ:メディアインタビューでも聞かれるトピックのひとつですね。一般的にヘルスケア、中でもバーチャルケア(D to Pのオンライン診療やD to Dといった医療従事者間の相談から、リハビリや慢性疾患のケア指導など、リモート通信を用いた医療・サービス)においては導入の決定はどれほどエビデンスがあるのかに依存しています。エビデンスがない時は、導入の意向は一切受けつけていただけませんでした。

それをどう克服したかというと、政府のイノベーションファンドを使い、チャリティーも盛り込み、臨床試験を行ってエビデンスを作り出しました。その結果、幸いなことに政治家と協力することができ、それによって政策が立案され、導入の壁を乗り越えることができました。

パーシー:もうひとつ素晴らしい例があります。
常にひとりのイノベーター、もしくは、KOL(Key Opinion Leader)が必要であり、その方が同じ立場の別の方とコンタクトを取り、輪を広げることが必要です。

例えば、小さな赤ちゃんが対象の新生児医療について。新生児を専門とする者であれば、海外において専門医の在住していない医療施設で生まれた新生児に何かしらの問題が生じた場合、適切な処置の早急な提供や人員不足など課題があることは誰でも理解していることですよね。しかし、課題を理解しているからといって、必ずしもそれがイコール解決できるというわけではありません。

そこで、ウィーメックスと私どもTeladocが担う役割は、同じ課題意識を共有するKOL同士をつなげていくこと。新生児医療において日本のリーダーと言われる方々とアメリカの新生児専門家をつなぎ、課題を解決できるという道のりを示すことでした。 エビデンスだけではなく、実際に課題に対するソリューションの存在を見せるということも、壁を乗り越える方法としてあるかと思います。

大塚:エド(パーシー)のコメントに追加して特に強調したいのが、地域社会とチーム一丸となって働くことの重要さです。地域社会の観点から言うと、エド(パーシー)のコメントにあった通り、コミュニティが重要になってきます。

そして、遠隔医療を通じて医療の課題解決に取り組むイノベーターやKOLの先生方、地域がすでに日本に存在していること、これはここ数年の大きな進歩と言えます。エド(パーシー)とトーマス(グイォニッシュ)が来日してくださって、お二人のおかげで日本と海外のKOL同士を結ぶことができました。点と点が繋がり、これを元に私どもの日本の遠隔医療の基盤をますます強固なものにできたと思っています。

Teladocとウィーメックスはひとつのチームとして機能しています。それがグローバルと日本、双方のKOLを巻き込み、知見の共有や連携を推進することで、遠隔医療をヘルスケア領域における課題の解決にお役立て頂ける機会の拡大に繋げられると考えております。

グローバルで見ると、各国でヘルスケアに関する問題が存在しています。一国として完璧な国はなく、私どもが貢献できる課題や領域は広く存在しています。Teladocとウィーメックスの協力によって提供できるサービスが広がり、得られるものも大きいと思っています。

パーシー:今、大塚さんが仰ったように、全能な国や人など存在しません。
私たちは日本の医療システムに対して道筋を示すことができますが、同じように日本のケースが全世界から関心を持たれる可能性があります。日本は地理的にもユニークで、学べることがたくさんあります。人をつなぐグローバルコミュニティの醸成が私たちのミッションであり、変化を起こしていきたいと考えています。

小暮:私たちが日本のKOLとディスカッションをすると、「海外の活用事例を教えてください」と言われます。

Teladocとの連携を通じて、論文や事例紹介の記事だけでは見えてこない生の情報や、実際に遠隔医療の活用に取り組まれている先生方のコメントを、直接得ることができます。それらの情報を活かし、日本のKOLにとても有意義な情報・ソリューションを提供できると感じております。

医療施設のスタッフや患者さんの反応

──国内外でTeladoc HEALTHを使用している医療施設のスタッフや患者さんの反応を教えてください。

パーシー:私たちは、仕事を通じて医療従事者や患者さんと直接接点を持つことができ、ポジティブな効果を感じて頂くことができるので大変恵まれています。素晴らしい事例の1つとしてイギリスのケースを紹介します。

COVID‑19の最中、新生児の専門医が小さな赤ちゃんのケアを家から行いました。Teladocのプラットフォームを使った回診です。

低体重での出生となった赤ちゃんも、そしてその赤ちゃんの両親も双方が(パンデミックの)ストレスフルな環境におかれており、専門医に大きく依存していました。赤ちゃんに適切なケアを適切なタイミングで提供する必要があるストレスレベルが高い状況の中、Teladocのシステムを使用する事で朝早い時間でも専門医の自宅からのフォローアップが可能となりました。ご両親は「本当に自信を持ってこのテクノロジーは素晴らしいと言える。専門医は、自分たちの子どもに必要な時に、いつでもサービスを提供してくれた」と言っていました。

グイォニッシュ:パンデミック中にドイツ国外、アフリカ諸国にまでにネットワークを広げ、コラボレーションあふれる形で仕事をした別の事例も紹介します。

集中治療のKOLからの反応で、特にパンデミックのような危機的な状況においてバーチャルケアの導入により、ウイルス自体、そして、オミクロン株の派生型などの効率的なフォローが可能になった、と言っていました。

研究者同士の距離が離れているにも関わらず、ウイルスをどのように治療したらいいのか、どういった治療が望ましいのかという情報交換ができたと言うのです。

また、患者さんに関しては、ロボットやデバイスが病室に置かれる環境は慣れないことだと思いましたが、デバイスのスクリーンを通じて専門医の姿が見られることで、専門医との関係性を構築できたとポジティブなフィードバックをいただきました。

小暮:日本でもまさに同じ状況です。ワークライフバランスが日本でも重要視されています。

例えば、新生児科のある専門医の場合、「Teladoc HEALTH」が導入される前は深夜まで働かれていました。家族と一緒に時間を過ごすことは困難な状況でした。しかし、「Teladoc HEALTH」を導入したことで、その先生は早く帰宅し、家族と時間を過ごすことができるようになりました。

もし何かあれば、「Teladoc HEALTH」を使いNICUにいる若手医師をサポートできます。NICUの若手医師にとって、夜間に容体に急変があった際、電話だけでなく、患者さんの様子や周辺医療機器画像などを上級医が遠隔から見てくれることは安心へとつながると思います。

先生だけでなく、そのご家族にとっても、そしてNICUの若手医師にとっても幸せな状況だと考えています。

また他のケースとして、へき地医療があります。高齢者の方が、その地域にお一人でお住まいの場合があります。訪問診療だと、本来は医療従事者が週1回診察をしたくても、移動時間の関係で診察ができる機会は月1回あるかないかという状況です。
しかし「Teladoc HEALTH」を使えば、月1回の訪問診療以外に、月2〜3回、遠隔で診察を行うことができます。患者さんが慣れるまで不安に思われることがあるかと思います。しかし先生が診てくれる回数が増えることが、患者さんの安心感そしてQOLの向上へと繋がると考えています。

大塚:私からは、私どもの取り組みを交えながら、弊社の最近のビジネスと「Teladoc HEALTH」のソリューションの関係についてお話します。

本日(2023年6月22日)、オンライン資格確認の累計導入数が35,000件を突破したことを先ほど発表いたしました。これは、日本企業の中ではこの分野をリードする数字です。オンライン資格確認は、病院やかかりつけ医のいるクリニック、薬局そして歯科を繋ぐ基盤になります。

厚生労働省が発表した最新の情報では、現状日本には、約24万もの医療施設があります。そのうち約10万件が一般診療所、調剤薬局が約6万、歯科診療所が約7万、そして病院が約8千件あります。(令和3年1月時点)

弊社では特にクリニックや薬局に向けてビジネスを展開しており、電子カルテにおいては、(2021年には)国内で約25%のシェアを持っています。そして10月には、富士フイルムヘルスケアシステムズ株式会社より電子カルテ・レセプト関連事業の取得を予定しています。これによりシェアがさらに広がる予定です。

日本のヘルスケアは地域密着型です。私どもはその基盤を、政府の施策のもと、オンライン資格確認で構築しています。現状、私どもは主に大学病院や大規模病院へ遠隔医療ソリューションを提案しています。オンライン資格確認のネットワーク、遠隔で繋がったクリニック・薬局と大学病院や大規模病院での遠隔医療ソリューションが、今後地域においてはより重要になってきます。

こうしたつながりを考えるからこそ、私どもは短期間のゴールではなく、10年、20年と先を見据えて動いていかなければならないのです。「Teladoc HEALTH」と弊社のコラボレーションは、日本の医療課題に間違いなく貢献できると感じています。