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  5. 医院承継を親族・親子で行う場合のメリット・デメリットについて留意点や事例を解説

承継 医師 2021.08.04 公開

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医院承継を親族・親子で行う場合のメリット・デメリットについて留意点や事例を解説

※本内容は公開日時点の情報です

#マネジメント

目 次

1. 医院承継とは

医院承継は中小企業でも増えているM&Aの医療版です。病院・クリニックの事業承継を指します。従来は、親子や親族間での親族内承継が多かったのですが、後継者不足により第三者の法人によるM&Aが増えています。

(1)親族間での承継

院長が高齢や病気により医院の継続が難しくなった場合、最初に考えられるのが院長の子どもや妻・兄弟による親族内承継です。「家業を継ぐ」イメージです。しかし、最近は、子どもが医師であっても跡を継がないことが増えています。

(2)第三者への承継

少子化の影響もあり、後継者がいないという医院も増えています。親族への承継が減る一方で増えているのが第三者への医院承継です。引退を考えている院長や経営者が社員や外部人材へ医院承継するケースです。後継者探しが困難なため、最近では、医療機関専門にM&Aを行う仲介会社も増えています。

2. 医院承継の際に親子・親族承継を選ぶメリット・デメリット

ここでは、親子・親族間で医院承継を行う場合のメリットとデメリットについて解説します。

(1)親子・親族承継を選ぶメリット

親子・親族承継の場合のメリットは次のとおりです。

①新規開業より初期費用をかけずに開業できる
後継者が開業を目指している場合は施設や設備を承継できるので、新規開業に比べて大きな初期費用をかけずに開業できます。

②患者・スタッフ離れのリスクが少ない
医院承継の場合、承継前に一定期間、現院長と一緒に医院で働くことになります。親族の場合はスタッフ・患者からも受け入れられやすく、承継が原因で患者やスタッフが離れるリスクは少なくなります。

③計画的に相続対策を行うことができる
万一相続が発生した時に、個人医院は事業用財産もすべて相続税の課税対象になります。親子・親族承継では、あらかじめ相続対策を考えながら最適な贈与・相続対策を計画することができます。

(2)親子・親族承継を選ぶデメリット

一方、親子・親族承継のデメリットもあります。

①開業の診療科が制限される
承継者の診療科が異なる場合、新たな診療科で開業することもできますが、地域の診療ニーズや設備により新規開業に比べて診療科が制限される場合があります。

②医院の場所を選ぶことが出来ない
①の診療科の制限と同様に、承継者の診療科に最適な立地を選ぶことができません。

③親・親族の影響を受けやすい
承継時に様々なメリットを受けられる反面、承継後も親・親族が非常勤医として診療を続けたり経営に関与したりすることが多く、経営面についても影響を受けやすくなります。

3. 医院承継を考えるタイミング

医院承継を考えるタイミングは現院長のライフプランと健康状態、承継者の準備状況を元に早めに検討を始めます。一般的には勤務医のリタイア時期である60代後半からリタイア時期を計画的に考えると良いでしょう。

4. 医院承継の手続き・流れ

親子・親族間の医院承継に必要な手続きおよび流れについて具体的に解説します。

(1)承継前の診療理念の共有と承継時期の決定

親子・親族であっても診療理念や経営方針が同じとは限りません。承継前に非常勤医師として院長と一緒に勤務をします。診療理念や経営方針を共有した上で承継時期を決定します。

(2)税理士・専門家への相談

親子・親族間取引では、医院承継だけでなく将来の相続を想定した上での承継計画の策定が必要です。まずは自院の経営状況を把握している顧問税理士に相談しましょう。税理士が医院承継や相続の専門家でない場合でも税理士の関与は不可欠です。税理士とともに専門家に依頼し、しっかりと必要な手続きを行います。

(3)資産と経営状態の現状把握

院長が所有する土地・建物・医療設備などは「売却」「贈与」「使用貸借」「賃貸」などの方法で引き継ぎます。院長のリタイア後のライフプランや将来の相続にも関わってきますので、税理士に相談しながら院長と後継者の双方にとっての最適な方法を検討します。
経営状態の現状把握としては資産だけでなく負債および現状の医療収益や患者分析などを正しく把握し、経営課題を共有します。

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(4)経営方針・診療科の決定

後継者の専門性や地域医療ニーズの変化に合わせて、承継後の経営方針と診療科を検討し決定します。内科を承継する場合でも専門性を強化した専門診療科を標榜したり、新たな診療科を追加したりすることもできます。院長が今後いつまでどのように診療に携わっていくかも検討します。

(5)経営計画の作成

経営方針と診療科を決定後に改めて承継後の経営計画を策定します。今後の設備投資や組織体制を決めます。

(6)承継の実施

承継時にはクリニック経営を承継するだけでなく、将来の相続対策を考慮した上で資産の承継計画をたてて実行します。

5. 医院承継を行う際の留意点

医院承継を行う際の留意点について、いくつか代表的なものを紹介します。

(1)個人クリニックの手続き

個人クリニックは開設者や管理者が代わるため、現院長の「廃業」と新院長の「開業」の手続きが必要です。新規開設と同様に保健所や税務署などに届け出が必要です。スタッフを雇っているのであれば社会保険事務所や労働局などでの手続きが必要となります。

(2)医療法人の手続き

一方、医療法人の場合は現経営者の理事長から後継者に交代する手続きをとるだけで、クリニックの資産や許認可を保有する医療法人を譲り受けることができます。
なお、平成19年4月以前に設立された医療法人を承継する場合は、出資者(社員)の持分の移転手続きが必要になります。

(3)負債の承継

未払金や借入金は、一般的にはそのまま承継します。院長が医院の経営資金を借入している場合、院長の個人保証や担保も後継者が承継します。保証人や担保の変更など金融機関での手続きに注意をしましょう。

(4)診療方針や診療スタイルの相違

地域で長年信頼を得ているクリニックであっても、診療方針や診療スタイルが地域の人口動態や医療ニーズの変化に対応できなくなっている場合もあります。後継者が院長やスタッフに承継後の診療方針や診療スタイルの変更について説明しないまま、新たな医療設備や電子カルテなどの医療事務機器を導入するとスタッフが変化に対応できず離職につながる可能性があります。

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(5)患者離れと患者層の変化

親子・親族間の承継であっても、地域の患者は院長との信頼関係で通院を続けます。いくら最新・最適な診療を提供しても、院長との相性や世代の違いで患者離れは起きます。ある程度の患者離れや患者層の変化を想定した事業計画を立てます。

(6)診療方針、診療スタイルに対応した集患対策

診療方針や診療スタイルを変更した場合、新しい患者の獲得には時間がかかります。地域密着型の診療でも、患者の受診行動が変化しています。ネットでの情報収集やオンラインの医療体制が求められています。自院のホームページやSNSを活用した集患対策は必須です。

6. 医院承継を親子・親族承継にした事によるトラブル例

(1)旧院長体制の院政化

総合内科のA院では院長の体調不良もあり長男に承継しました。
新院長は専門外来を加え最新の医療機器を導入しようとしました。ところが、財布の紐は事務長である母親が握っています。「新しい医療機器なんてもったいない」と言い張り、設備投資に反対します。
結果、高齢者の受診控えが進む一方で専門外来への集患が進まず、医療収益は減少続けています。
事業承継はしたものの、親が後継者に介入し続けている例です。

(2)診療・経営方針の変化によるトラブル

皮膚科のB院では承継をきっかけに電子カルテやオンライン予約を導入し、患者の利便性と事務効率を高めようとしました。診療スタイルの変更について、口頭ではスタッフに説明していたものの、実際に電子カルテやオンライン予約が始まると古参のスタッフはわからないことばかりで混乱してしまい、承継直後に集団退職してしまいました。

7. 失敗・トラブルを防ぐための方法

親族への承継でのトラブルの原因の多くは、コミュニケーション不足です。親族だからわかっているだろうと思っていても実際には伝わっていません。
現院長が大事にしていることを受け止めた上で承継後のありたい未来を伝えましょう。伝えてみれば思いは同じということもよくあります。 そして、その思いはスタッフや周りの人にも伝えましょう。人は変化を受け止めることが苦手です。でも思いが伝われば喜んであるべき未来への変化を受け入れ、一緒に行動するようになります。

筆者プロフィール

株式会社アイリスプランナー
中小企業診断士/医業経営コンサルタント
奥野 美代子(おくの みよこ)

https://www.irispl.jp/

外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。

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