長年培われたモノづくりのDNAを礎に、PHCのヘルスケアIT事業は新たなステージへ。PHCが目指す「デジタルヘルス」のチャレンジや意義とは。

PHCホールディングス株式会社 執行役員 大塚孝之 インタビュー

グループビジョン「グローバルの診断・ライフサイエンス、日本のヘルスケアソリューションにおいて、ベストインクラスのプレシジョンとデジタルソリューションを提供するリーダーとなる」を掲げ、様々なチャレンジを続けるPHCグループ。糖尿病マネジメント、診断、ライフサイエンス、ヘルスケアソリューションと、多様な事業領域においてデジタル化の取組みが加速している。
採用チームはPHCホールディングス株式会社 執行役員 兼 PHC株式会社メディコム事業部 事業部長 大塚孝之にインタビューを実施。医療IT業界をリードするヘルスケアITサービスを展開してきた メディコム事業部の展望を聞いた。

─ 大塚さんは医療・ヘルスケア業界に長く携わってこられました。業界に対するお考えや課題意識をお聞かせください。

まず市場規模ですが、約44兆円(*1)と言われる日本の医療費と、約10兆円(*2)にのぼる介護費を合計した約55兆円になります。日本のGDPは約550兆円(*3)ですので、医療・介護業界は、GDPの10%程度の規模です。また、国家予算の一定割合を占める社会保障費は今後も拡大し続け、市場規模が一定成長し続けることが見込まれています。

もともと医療や介護は、社会福祉や社会保障という位置づけでした。ところが、医療費や介護費が60兆円を超える規模に拡大していくことが見込まれている中で、いかにしてそれを削減するか、同時に、個別化医療など医療サービスの質をいかに向上させるか、という2つの課題が浮上しています。これら課題の解決方法として、他の業界で進んでいる、IT技術の活用やデジタルトランスフォーメーションが注目されています。政府による規制緩和とともに、オンライン診療などに代表される医療のデジタル化を一気に進めていくことが求められています。

糖尿病マネジメント、診断・ライフサイエンス、ヘルスケアソリューションと多様な事業を展開するPHCグループですが、それぞれの事業において、グループビジョンにもある"デジタルソリューション"プロバイダーとなるための機会は多分にあります。デジタルの要素を事業に取り入れ、社会的なニーズの強いデジタル化を加速していくことは、とてもやりがいのある仕事だと考えています。

─ PHCグループにおいては、PHC株式会社のメディコム事業部(以下、メディコム)がヘルスケアIT事業を担っています。メディコムの事業概要を教えてください。

メディコムは1972年に日本で最初にレセプトコンピューターを開発したところから始まります。当時、「業務のIT化」はまだこれから、という時代でした。そのようなアナログな計算や紙による管理中心の時代に、オフィスコンピューターにソフトウエアを搭載したレセプトコンピューターを開発したのがメディコムです。その後、1999年には電子カルテシステムを開発し、現在では調剤薬局向けのシステムや健康保険組合向けシステム、企業向けの健康経営支援サービス、電子お薬手帳といったアプリケーションなど、多岐に渡るヘルスケアITサービスを展開しています。

当社の強みは、このような歴史を経て、日本のヘルスケアIT市場における高いシェアを獲得したことです。電子カルテシステムを導入している診療所の約35%、電子薬歴システムを導入している調剤薬局の約25%が、当社のお客様です。両市場でこれほど大きなシェアと顧客基盤を有する会社は、現時点では、当社以外にはないと思います。また、全国各地の販売代理店の営業やインストラクターが顧客サポートを行い、お客様の声を反映したサービスの提供や改善を行っていることも特徴のひとつです。

当社の電子カルテシステムや電子薬歴システムを通して蓄積される診療記録や医薬品の処方データの数は、年間で数億件(*4)にものぼります。このように、多くの国民の医療に関わる基幹サービスを提供するメディコムでは、これらシステムを日々改善し続け、医師や薬剤師の皆様の仕事の効率化と医療の質の向上を図ることで、多くの患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に貢献したいと考えています。

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─ これからのメディコムの展望や戦略をお聞かせください。

私たちの強みは、先ほど申し上げたように、診療所や調剤薬局などの医療機関に対して、基幹となるシステムを長年提供してきたことですが、既存のサービスを改善し続けることはとても大切なことだと考えています。短期的には、既存サービスのクラウド化をはじめとした新規技術への取組み強化や、より多くの市場ニーズやお客様の声を反映したサービス開発体制への転換を進めています。さらに、メディコムでは3つの成長領域を新たに定義し、新規事業として取組みを進めています。

一つ目はテレヘルス(遠隔医療)です。このうち、オンライン診療と呼ばれる「Doctor to Patient(医師と患者)」の領域が、昨今の法改正も伴って、日本でも徐々に認知され始めています。このオンライン診療の領域については、私たちはすでにMICIN社やインテグリティヘルスケア社といったスタートアップ企業との提携を行い、サービス機能の相互連携を実現しています。一方で、テレヘルスの中でも「Doctor to Doctor/(医師同士)」の領域は、海外に比べると日本はまだこれからという段階です。たとえば、日本では大病院の勤務医が他院の医師の診断や手術のサポートを行うためにわざわざ病院に出張するのが通常です。しかし、医師間のテレヘルスを実現することで、医師は病院にいながらにして離れた病院にいる医師と繋がり、診断業務の支援や遠隔操作による手術を行うことが可能になります。このようなテレヘルスの実現が、今後、地方やへき地の医療体制の強化につながると注目されており、医師の生産性や医療の質向上にも貢献できると考えています。

二つ目は、ヘルスケアプラットフォームという、プラットフォームビジネスの構築です。当社はレセプトコンピューターをはじめとして、電子カルテシステム、電子薬歴システム、健康保険組合向けのサービス、また電子お薬手帳といったサービスを提供しています。これらのサービスは、実はまだそれぞれが単独で機能している状況です。今後、データ活用や地域包括ケアといった観点でも、サービス間連携がとても重要になってきます。また、単に連携ソリューションを創出するのではなく、各ステークホルダーの情報流通や協業関係をネットワーク化していくことで、まだ世の中にない新たなプラットフォームビジネスとして進化させていくことを考えています。このプラットフォームにおいて、AIやIoTを活用した問診システム、バイタルモニタリング、薬歴等を共有することで、オンライン診療での課題であった患者情報の捕捉可能となり、新たな医療の進化となると確信しております。さらに、当社は、プラットフォーム上にEC(電子商取引)や市場機能があったり、情報流通のコミュニティが作られ、医師同士や医師と薬剤師が情報共有することによって医療の質を高める体験を提供したり、また最終的に患者にとってより良い医療体験を実現していくことを考えています。

最後に、三つ目はPHM(Population Health Management)です。これまでの医療においては、がんなどの病気を治療する急性期医療が発達してきました。ところが、高齢化の進む日本でこの先増えていくと言われているのは、例えば糖尿病のような慢性疾患です。このような慢性疾患については、事例やデータを活用し、特定のグループを対象にした取組みが注目されています。そこで当社の電子カルテシステムなどに蓄積されるデータの活用を検討しています。例えば、どういった病気や症状に対して、どういう治療をしたらどれだけ病状が改善したか、というデータを医療機関にフィードバックすることで、病気の治療や予防、予後に活かすとともに、地域医療に貢献ができます。さらには、患者さんにフィードバックすることによって患者さんのQOL向上にも寄与し、医療費を削減することで、保険者や自治体などの財政改善に貢献できるPHM事業を目指していきます。また、個人情報の中でも要配慮個人情報として厳格な取り扱いを求められている医療データの2次活用においても、次世代医療基盤法に則した活用を早くから検討しています。2018年に施行された本法律によって、認定事業者が匿名化し、ビッグデータ化したデータセットを活用して新たな医療サービスの提供や、新しい医療機器や新薬の開発に貢献できるように取り組んでいます。

このように、医療・ヘルスケア業界では他の業界に比べて、デジタルトランスフォーメーションにおけるデータ活用が遅れていますが、この先どんどん進展していくであろうと思います。当社が50年近く、ヘルスケアIT業界のパイオニアとしてサービスの提供を続けてきた歴史や築いてきた信頼をベースとして、各取り組みを推進していきます。

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─ ヘルスケアIT事業に携わること、とりわけメディコムで働くやりがいは何でしょうか。

まず、日本の医療・ヘルスケア業界における重要な社会課題に対して、最先端のテクノロジーやデジタル技術を活用した解決策の創出に取り組むことができる、という点があげられます。金融におけるフィンテックや人事におけるHRテックなど、様々な業界でデジタル化が進んできました。ヘルステック、いわゆる「デジタルヘルス」において特徴的なことは、高齢化や医療費の増加など、社会性・公共性の強い課題解決に向けたテクノロジーである、ということだと思います。

次に、これは魅力でもあり課題でもあるのですが、医療・ヘルスケア業界は、データ活用の法規制が厳しいことや他業界と比べて新規技術の活用に際しての障壁が高いことから、IT化やデジタルトランスフォーメーションが遅れています。逆に言うと、他業界ですでに取り入れられ、ある程度実証されたテクノロジーを使えるという面ではとても面白い領域です。最先端の環境で最先端の技術を使いたいという人には物足りないかもしれませんが、社会課題の解決やビジネスの実現に向け、確かな手ごたえをもってIT化やデジタルトランスフォーメーションへのチャレンジができ、顧客や社会に影響を与えることが出来るというやりがいを持てるのではないでしょうか。

また、ヘルスケアIT企業の中でもメディコムだからこそ得られるやりがいは、私たちが持っている既存の資源の活用によってビジネスのレバレッジを効かせられることだと思っています。医療・ヘルスケア業界を取り巻く課題は、社会的、国家的な課題ともいえる大きな課題です。業界におけるパイオニアとしてヘルスケアITサービスを50年近く開発・提供するなかで培ったノウハウや知見、高い市場シェアや盤石な顧客基盤を活用して、大きな社会課題の解決に向けた新たな取り組みでレバレッジを効かせることができるという点は魅力の一つではないでしょうか。

昨今では、IT業界やスタートアップ企業から入社される方々が増えています。私たちの持つ資源や強みに、IT業界やスタートアップ企業の持つスピード感や文化が融合することで、新たな可能性が広がり、多様なチャレンジができると考えています。

これからの当社のデジタルヘルスのチャレンジにご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご応募ください。皆様と一緒に新しいメディコムを作っていくことを楽しみにしています。

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大塚 孝之
PHCホールディングス株式会社 執行役員 ヘルスケアソリューション共同ドメイン長
PHC株式会社 取締役 メディコム事業部 事業部長

【略歴】

<最終学歴>

  • 1987年 慶応義塾大学理工学部管理工学科 卒業
  • 2004年 米国ニューヨーク州 ロチェスター大学 大学院 サイモンビジネススクール 卒業(MBA)

<職歴>

  • 1987年 株式会社リクルート 入社
  • 1992年 株式会社シーアイエス 入社
  • 2004年 GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
  • 2008年 GEヘルスケア・ジャパン株式会社 エンタープライズ・ソリューションズ事業本部長
  • 2010年 GEヘルスケア・ジャパン株式会社 ヘルスケアIT本部長
  • 2013年 日本GE株式会社 執行役員 マーケティング本部長
  • 2016年 日本GE株式会社 執行役員 コマーシャル・インテンシティ・ディレクター
  • 2017年4月 パナソニック ヘルスケア株式会社 執行役員 メディコム事業部 副事業部長
  • 2017年6月 パナソニック ヘルスケア株式会社 取締役 執行役員 メディコム事業部長(現 PHC株式会社 取締役 メディコム事業部長)
  • 2020年4月 PHCホールディングス株式会社 執行役員 ヘルスケアソリューション共同ドメイン長

TOPICS:メディコム事業部は2020年9月、ビジネストランスフォーメーションセンター(渋谷)・さいたまテクノセンター(大宮)の2つのオフィスを新設。ビジネストランスフォーメーションセンターではキャリア採用のメンバーを中心に、新たなクラウドサービス開発や新規事業などに取り組む。さいたまテクノセンターは既存のメディコムのサービス開発や運営の部門を異動させ新たなスタートをきった。

ビジネストランスフォーメーションセンター(渋谷)

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さいたまテクノセンター(大宮)

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編集後記:インタビューで印象的だったのは「医療については、誰でもパーソナルなストーリーを持っているはず」というお話でした。多くの人が、自分自身や家族、周りの大切な誰かを通して何らかの形で医療に関わる。そして、それぞれに思い出や課題感をもっているのではないか。社会に貢献したいという想いやビジョンをおもちの方には、自分ごととして向き合える課題や機会が沢山ある業界だろう、と。共感しながらお話を聞かせて頂きました。