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クリニック経営 医師 事務長 2022.02.07 公開

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社会保険診療報酬支払基金のレセプト審査にAI導入へ!クリニックでの点検業務は不要になる?

AIを搭載したレセプト審査の新システムの概要や開発の背景、さらには今後、医療機関側に求められる対応について解説していきます。

※本内容は公開日時点の情報です

#レセプトの悩み #システム入替

2021年9月、社会保険診療報酬支払基金は、レセプト審査を行うための新システムを導入しました。その新システムの一部にAIが用られたことで注目を集めています。今回の記事では、AIを搭載したレセプト審査の新システムの概要や開発の背景、さらには今後、医療機関側に求められる対応について解説していきます。

社会保険診療報酬支払基金のレセプト審査へのAI導入とは?

社会保険診療報酬支払基金とは、保険者から委託を受けて保険医療機関が請求した診療報酬に対し、審査や支払いを行う専門機関です。
社会保険診療報酬支払基金では、2021年9月審査分からレセプト審査に関する新システムを導入しました。業務効率化やレセプト審査に係る都道府県ごとの不合理な差をなくすことが目的です。新システムにはAIが搭載され、レセプト審査時の目視確認の件数を削減することが期待されています。

導入の背景

レセプト審査にAIが導入された背景には、以下のような事情があります。

●取り扱い件数が増加する一方で、職員数は減少していった
●ICTを活用した効率的な事業運営と業務品質の向上が国から求められていた

社会保険診療報酬支払基金が取り扱うレセプトは年々増加しており、厚生労働省によると、2020年度の取り扱い件数は医療保険・生活保護・地方単独事業をあわせて約11.9億件となる見込みです。2010年度の取り扱い件数である約8.8億件と比較すると、約3億件増加しています。

一方で社会保険診療報酬支払基金に勤める職員数は削減されており、2020年度は4,113人でした。ピーク時(2001年度)の6,321人と比べると、約2,000人減少しています。現状は職員1人当たりの工数を増やすことでレセプト審査業務にあたっていますが、業務効率化を図るシステムの導入が望まれているのです。

社会保険診療報酬支払基金は、ICTを活用したさらなるレセプト審査業務の効率化や高度化を推進する取り組みとして、審査支払に関する新システムを構築しています。そのシステム内のレセプト振り分けを担当する過程にも、2種類のAIが実装される予定です。

導入の目的

レセプト審査支払の新システムにAIを導入した最大の理由は、以下の2つです。

●ICTの活用によって審査業務の効率化と高度化を推進すること
●審査結果の不合理な差異を解消すること

新システムは、受付・審査・支払いの3つの過程に分けられており、そのうちの審査を行う過程にAIが導入されています。審査過程でのAIの役割は審査そのものではなく、「コンピュータによるチェックで完結できる」もしくは「人が目視で確認すべき」レセプトのどちらに該当するか振り分けることです。振り分けの第一段階では「目視による審査対象のレセプト」、「AIによる振り分け対象のレセプト」、「医学的判断が不要で判断が明らかなレセプト」の3つに振り分けられます。この振り分けは受付・事務点検チェック、電子点数表チェック、突合点検チェックにより付箋が付けられたレセプトや特別審査委員会での審査対象となるレセプトなど特定条件に該当するレセプトを「目視による審査対象のレセプト」として振り分けます。

「目視による審査対象のレセプト」は診療報酬が一定以上のレセプトや特定の医療行為(生体部分肺移植術や同種心肺移植術など)に係るレセプトが該当します。また、再診料と処方箋料のみで構成されるなど医学的な判断を必要としないレセプトを、「医学的判断が不要で判断が明らかなレセプト」に振り分けます。そして、どちらにも振り分けられなかったレセプトが「AIによる振り分け対象のレセプト」として縦覧・入外チェックを経た後に第二段階の振り分けに移行します。

第二段階の振り分けを担うAIは数ある機械学習モデルのうちminhashとxgboostの2つで構成され、これらを組み合わせて推論することによって精度の高い振り分けが可能となったのです。minhashを用いた振り分けでは、各レセプトを類似した過去レセプトの審査・返戻率によって振り分けを行います。返戻がなかったグループに分類されたレセプトは人による審査を受けずに支払請求されます。類似する過去レセプトがないレセプトはxgboostにより査定・返戻率に基づく振り分けが行われる仕組みです。

minhashもしくはxgboostのいずれかで審査・返戻率が高いと判断されたレセプトは目視対象レセプトとして分類されます。審査・返戻率が低い分類されたレセプトはチェックマスタや点検条件によるチェックに該当すれば人による審査が行われ、該当しなければ目視対象外レセプトとなります。

さらに、2011年度にはオンライン請求が義務化され、レセプトの電子化が進みました。そして全国統一的なコンピュータ・チェックがかけられるようになりましたが、独自のルールを設定する自治体が多く、それが支部間の審査結果にあらわれる不合理な差異の一因となっていました。AIでの審査により、その差異を解消することが期待されています。

レセプト審査のAI導入が医療事務の負担軽減につながる可能性も

AIを搭載した新システムをレセプト審査に導入すると、社会保険診療報酬支払基金の職員のほか、医療機関で働く医療事務の負担軽減にもつながる可能性があります。
医療事務の主な業務の一つは、レセプトの作成や返戻への対応といったレセプト関連の業務です。一般にレセプトに関する業務は特定の期間に行われます。その期間には通常の業務に加えてレセプト関連業務をこなす場合もあるため、医療事務の負担は大きくなりがちです。
レセプト審査にAIの導入によって目視で確認すべきレセプトの件数が削減し、社会保険診療報酬支払基金の職員のレセプト審査に係る工数を減らすことができます。そのため、AI導入前と比べて目視によって審査を行うレセプト1件ずつへの注力が可能となるためにヒューマンエラーが減る、つまり返戻自体が誤りで本来は対応する必要がなかった返戻の減少も期待できるのです。

引き続き手動でのレセプト点検は必要

先述したように、レセプト審査にAIが導入されることによって社会保険診療報酬支払機関だけでなく、医療機関側のレセプト関連業務も効率化が実現すると予想できます。
しかしながら、コンピューターチェックによりチェック付箋が貼付されたレセプトや社会保険診療報酬支払基金の本部に設置されている特別審査委員会による審査対象となるレセプトは引き続き目視による厳しい審査が行われます。また、今回のAIを含む新システムの導入は社会保険診療報酬支払基金のみであり、国民健康保険団体連合会は対象ではありません。そのため、AI導入以前と変わりなくレセプトの請求時や返戻時に行う手作業でのレセプト点検は必要です。負荷の大きいレセプト点検に関わる業務を効率化するためには、それに係る業務の手助けをしてくれる機能(アシスト機能)を持つレセコンや電子カルテの活用が有効です。

医療事務のサポート機能が付いたレセコンや電子カルテの活用を

レセプトを作成するコンピューターシステム(レセコン)のなかには、レセプト点検のアシスト機能が付いたものがあり、下記の3項目などについて点検してくれます。

●電子点数表チェック(診療報酬点数表の告示・通知に基づくデータを活用した点検)
●縦覧チェック(複数月にわたるレセプトの横断的な点検)
●横覧チェック(別保険のレセプトとの相関を点検)

レセコンを選ぶときには各レセコンが使っているロジックの確認が重要です。必要なアシスト機能をもつレセコンを使って日々の点検を行うことで、返戻の対応や査定による減収を回避できます。

社会保険診療報酬支払基金が担うレセプト関連業務の効率化を目的としてAIが搭載されたレセプト審査の新システムが導入されました。一方で、医療機関では医療事務によるレセプト点検は引き続き実施する必要があります。メディコムのレセコンは診療基本情報の入力ミス・算定漏れ・算定ルールへの準拠・レセプト病名の入力漏れなどを日常的に点検できます。さらに、ネット配信で常に最新情報へ更新しているため、正確なレセプト点検が可能です。

日常的なレセプト点検や返戻対応に係る業務負担の軽減や返戻・算定漏れ防止による収支安定化を図るための策として、レセプト点検のアシスト機能が付いたレセコンを活用してみてはいかがでしょうか。

本記事のポイント

1.AIを搭載したレセプト審査システムが社会保険診療報酬支払基金で新たに稼働した
2.AIはレセプト審査の振り分け工程で用いられている
3.新システムよって目視によるレセプト審査件数の減少が見込める
4.一部の医療事務は引き続き手動でのレセプト点検が必要
5.レセプト点検の負担軽減にはアシスト機能付きのレセコンが有用

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