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クリニック・薬局経営コラム

危機を救うリーダーの条件は“自己コントロール”

日常業務を行いつつ起こりうる危機をシミュレート

 「飛行機は、一度離陸したら着陸するか墜落するかのどちらかである」。ぶっそうに聞こえるかもしれませんが、フライト中のパイロットは常にそうした危機感を持っています。いわば乗員乗客の運命を背負っているわけで、常にあらゆる事態を想定し、「何が起こっても、必ずどこかに安全に着陸する」ことをシミュレートしながら通常業務を行っているのです。
 例えば、2009年に「ハドソン川の奇跡」と呼ばれた航空事故がありました。ニューヨーク市内の空港を離陸直後の旅客機で、バードストライク(鳥の衝突)によりエンジンが停止。機長は、住宅地への墜落を避けるためにハドソン川に不時着水させ、乗客・乗員全ての命を救ったのです。

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 確かに、この時の機長の行動力と技術は、素晴らしいものでした。しかしこれは、『奇跡』ではありません。機長自身も、テレビや新聞などの取材に対して「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」と述べていますが、日常的に危機を想定しシミュレートしてきた通りに動いた成果なのです。
 リーダーに求められているのは、奇跡を信じて思いつきやひらめきで行動をとることではありません。どんな時にもいつもと同じ行動をとり、いつもと同じ成果を出すための自己コントロール力が求められているのです。卓越した技術や行動力を持っているようでも、それが1、2回うまくいく程度なら、身についているとはいえません。プロは、同じことを100回やったら100回とも同じようにできることを求められます。それは常に同じ結果をもたらすよう、トレーニングに励む自己コントロール力があるから身につくことなのです。

日頃は完璧を目指し、いざという時は満点にこだわらない

 では、現場に起こった危機を乗り越えるために、リーダーに求められる要素とは何でしょうか。
 「コントロール(control)」「クルー・リソースマネジメント(clue resource management)」そして「コミュニケーション(communication)」の3つを、危機を乗り越えるリーダーシップの「3C」といいます。
 まず、何が起こっても、常に落ち着いて自分をコントロールすることです。当然ですが、自己コントロールできない人が他者をコントロールできるはずはありません。
 次に、誰が何をできるのか、スタッフの持つリソース(人的資源)を確認します。

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 そして、スタッフに指示を出す際のコミュニケーションです。緊急を要するときほど、重要なのは「間を保つこと」です。自分が熱くなって余裕がなくなれば、指示は伝わりにくくなります。もちろん、緊急時には「なぜそうするか」をゆっくり説明している時間がないことも起こります。そんな時、端的な指示だけでしっかり意図が伝わるためには、日頃から部下やスタッフと十分なコミュニケーションをとっておく必要があります。
 最後に、いざという時の「重要度の選択」です。日頃は100%の結果を求めて動くのがリーダーですが、それが難しい事態を見極めたら、「一番基本的で重要なこと以外は捨てる」という覚悟を持つことです。それは、日頃からベストを目指しながらも、いざという時の優先順位をしっかり想定しておく、ということでもあります。そうすれば、例え満点はとれなくても最悪の事態を免れることができ、職場とスタッフを守ることにつながるはずです。

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筆者情報

小林 宏之(こばやし ひろゆき)

1946年、愛知県新城市生まれ。東京商船大学航海科中退後、1968年に日本航空に入社。入社以来42年間一度も病欠、自己都合でスケジュールを変更せず。乗務した路線は日本航空が運航した全ての国際路線及び主な国内線、総飛行時間は18,500時間。首相特別便機長や湾岸危機時の邦人東南アジア人救出機機長などを務め、2010年3月に日本航空退職。現在は、日本航空機操縦士協会の副会長、慶応大学大学院の非常勤講師を務める傍ら、危機管理・リスクマネジメントの専門家、航空評論家としてメディアや講演会などで活躍中。著書は『機長の集中術』『機長の健康術』『JAL最後のサムライ機長』『ザ・グレート・フライト〜JALを飛んだ42年』など。

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