2年に1度行われる「診療報酬改定」。診療所経営に大きな影響をもたらすため、その動向を早期に理解することは大変重要です。特に、令和4年度の診療報酬改定はコロナ禍で初めて行われる改定であるとともに、2024年の「第8次医療計画」「医師の残業の上限規制」「医療と介護の同時改定」、2025年の完成を目指している「地域包括ケアシステム」を見越しての内容となります。
改定スケジュール
診療報酬改定のスケジュールは、12月初旬に社会保障審議会医療保険部会で「基本方針」が策定され、その後、内閣の予算折衝会議で「改定率」が決まり、それを受けて1月中旬に中央社会保険医療協議会に改定の「諮問」が行われます。その後、2月初旬に「答申」され、改定の大筋が決定され、3月初旬に「告知」、そして4月1日に改定となります。
基本方針
12月10日の社会保障審議会医療保険部会で「基本方針」が策定され、1月14日の中央社会保険医療協議会に諮問されました。
今回の改定にあたって、新型コロナ等の感染対策を継続しながら、今後の超高齢社会に向けて継続的に社会保障制度を維持するために、効率的で効果的な医療政策を実現するとしています。また、過去の改定の流れを継承しながら、2020年初頭から始まった「新型コロナの対応」や、感染拡大により明らかになった課題を踏まえ、「地域全体での医療機能の分化・強化、連携」等の対応を行うことが重要としています。さらに、現在のデジタル社会へ順応し、質の高い医療提供体制の構築に向けた取組を進める必要があるとしています。
「基本的視点」としては、以下の4点が示されています。
(1) 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築【重点課題】
(2) 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進【重点課題】
(3) 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
(4) 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
(出典)社会保障審議会 医療保険部会(2021/12/10)<厚労省>
改定率
12月22日の内閣の予算折衝会議で、令和4年度の診療報酬改定の改定率は、診療報酬本体がプラス0.43%(医科プラス0.26%、歯科プラス0.29%、調剤プラス0.08%)、薬価はマイナス1.35%、材料価格はマイナス0.02%、全体(ネット)改定率はマイナス0.94%となりました。
診療報酬本体のプラス0.43%には、①看護の処遇改善のための特例的対応(プラス0.20%)、②リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化(マイナス0.10%)、③不妊治療の保険適用のための特例的対応(プラス0.20%)、④小児の感染防止対策にかかる加算措置の期限到来(マイナス0.10%)が含まれています。
診療報酬本体は過去12年間で最低の改定率となりました。また、リフィル処方箋がどこまで影響するかは不明であり、この新たな取り組みは、診療所経営には大きな影響があると予想されます。ちなみに、リフィル処方箋とは、病状が安定している患者に対し、一定の期間内であれば反復使用できる処方箋のことです。薬が必要なときに薬局でリフィル処方箋を提出すれば、医師の診察を受けなくても薬をもらうことが可能になります。リフィル処方箋は、日本ではまだ導入されていませんが、欧米ではすでに導入されています。リフィル処方箋によって医療機関への通院頻度を下げることで、医療費抑制につながると見込まれています。
改定率の付則
今回の改定率には、新型コロナ感染拡大により明らかになった課題等に対応するために、以下の項目について、改革を進めるよう指示されています。
① 医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即した、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化
② 在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進
③ 医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し
④ 外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し
⑤ 費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し
⑥ 薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化
⑦ OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化
この中で、診療所に影響する内容としては、「外来医療の機能分化・連携」「かかりつけ医機能」「後発医薬品」「既収載の医薬品の保険給付範囲の見直し」「湿布薬の処方の適正化」などです。
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